ヘイセイラヴァーズ

本、舞台、映画、歌、短編小説、エッセイ、アイドル、宝塚歌劇、など、、、☺

私もいつか彼を求める(宝塚『エリザベート』感想)

 私は『エリザベート』のいったい何にこんなに惹かれているのだろう。

 黄泉の帝王トートへの憧れ?爛熟したハプスブルク家の悲しい滅亡?民衆たちの圧倒的な怒りのエネルギー?そのどれもであり、また、そのどれでもない。

 きっとそれは、出てくる人々全員に、それぞれの強さがあり、そして弱さがあるところだ。フランツは優しいがマザコンエリザベートは気高いが自分勝手、革命軍は理想に燃えているが作戦を練っている時の表情はまるっきり悪人、民衆はひとりひとり愛を抱えていて、それでいてたしかに愚かだ。

 そして完全な存在であるはずのトートでさえも、エリザベートを愛したことで弱さを抱えてしまう。

 

あなたは恐れてる。彼女に愛を拒絶されるのを!ーーーちがう!!

 

 エリザベートになんど愛を拒絶されようが自分の思いを伝え続けたフランツの方が、外堀を埋めていったトートよりも男っぷりが上であると私は感じる。『エリザベート』という物語はトートが「人間落ち」していく話であるともいえる。

 人間の不完全さとそれゆえの底知れなさ。『エリザベート』が描くその部分が、私がこの物語に強く惹きつけられ、同時に恐ろしく感じる理由であるのかもしれない。