ヘイセイラヴァーズ

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太ったおばさんのはなし(短編小説feat.『フラニーとゾーイー』)

 「今度の職場は周りに何もなくて本当にさびしいところです。お昼ご飯は家から持っていかないと食べそびれてしまいます。そっちのように都会じゃないからカフェやレストランなんてもちろんないし、コンビニだって歩いて二十分のところに一軒あるだけ。(往復しただけでお昼休みが終わってしまう!)海が近いので海風がとても強くて、冬はとても寒いと思う。本当にだだっ広い土地にポツポツと建物があるだけだから、ちょうど空港みたいな感じです。これだからモノレール沿いの駅は良くないんだよね。でもとりあえず派遣の仕事ではないからしばらくはここでやってみることになると思います。恐山でお土産やをやるのはもう少し先になりそうです。(私が将来恐山でイタコのお土産を売って生活したいと言ったこと覚えてる?)

 ところでこの前もらった手紙では息子のことまで心配してくれてありがとう。おかげさまで彼も元気です。とりあえずやっとアルバイトをしながら就職活動をしているらしい。(少なくとも自分ではそう言っています…)何を目指しているんだかわからないけど、まあ毎日外に出て何かをしているようだからいいかと思っている。甘いですか?だけど私と彼はずっと二人きりでやってきたのでつい小さい頃のままいつまでも子供のような気がしてしまうのです。特に小さい時にフェスにいって手を繋いで一緒にいろんなアーティストのライブを見て回った夜のことを思い出すと何もかもが許せるような気がしてしまいます。楽しいばかりではなくて彼を守るために大声を出したり警察のお世話になったりもしたけどね。私はなぜか彼に引け目のようなものを感じているのかもしれません。一緒に働いていたときからずっと言っていたけれど、あなたが私の息子のお嫁さんになってくれればいいのに!冗談と思っているかもしれないけど私は本気ですよ。気が向いたらいつでも言ってね。

 だけど私は最近思ったのですが、私は娘がいればいいなと思っているのです。娘がいたら私もいろいろと共有できてラクだしもっと楽しくやれたのではないかと思うのです。

 とにかく元気で、無理してはダメだよ。ちゃんと言ってしっかり有給休暇も取ること。旅行にも行って楽しむこと。可愛くあろうとして無理しすぎないこと。どこにいっても大丈夫なんだから、ゆっくりしてやればいいんだよ。自分の身をしっかり守ってね。」

 その不思議な、たくましさと弱さが、女性と少女が、同居した手紙を読んで、私は彼女が巨体を揺らしながら坂道を登ってくるシルエットを思い出す。夏に履いていた茶色いサボを青いブラウスと汗の匂いを。

 私の手はすっかりとふやけ、額からは汗が水のように滴り落ちてくる。乾いた膝の上でとんとんと便箋を揃え、封筒に戻して浴槽の蓋の上に注意深く置く。私の思考は、浴室のドアの向こうから呼びかける母親の声によって中断される。