ヘイセイラヴァーズ

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プリンセスの変貌(映画『シュガーラッシュオンライン』感想)

 好きな男性のタイプを友人と話していて、本気でケンカになりそうになったことが一度だけある。友人は「しっかりした性格でお金と学歴があるひと」が好きだと話した。私は「自分が好きなことをしていて顔がかっこよくて年下」が好きと言った。ケンカになりそうになったのは意見が対立したからではない。彼女が私のタイプを聞いた瞬間に「でもアンタだって結局いつも私と同じ堅実なタイプを彼氏に選ぶじゃん」と言ったからである。

 私がその言葉にカチンときたのは結局核心を突かれたからなのだと思う。口ではめちゃくちゃなことを言いながらも最終的には安定を選択してしまう私の性格を真っ向から指摘されたように感じたから。

 それにひきかえ、この「シュガーラッシュ2」の主人公の女の子ヴァネロペは強い。安定よりもスリルある自分の夢を選ぶ。これまで自分が手にしていた愛を捨てる。それはそれはあっさりと。エンディングまでその選択にはなんの妥協も救いもない。選んだ人生があり、それによって捨てられた側がある。その鮮やかな姿は衝撃的で、その点においてこの映画は女の子にとって強力なアジテーション映画であると思う。

 私は自分の夢を、そして大切な人が抱える夢を応援したいと思う。だけどそこにもしこれまで大切に思っていたことが含まれないとしたら?私は”運命”というものが怖い。その人の意思とは関係なく、巻き込み飲み込む抗うことのできない強い力。なにかを差し出さざるをえないそれに出会ってしまうことが怖くて、そして怖いからこそ、強く憧れてしまう。惹きつけられてしまう。

 だけど、と私は思うのだ。私たちはもう大人。出会ってしまった運命と今抱える現実のバランスをつけることができるのではないかと。力技でネジ伏せてその両方を取ることができるのではないかと。ヴァネロペがラルフにテレビ電話をすることでその関係を保っているように。

 とにかく私は全国の女の子に伝えたい。どんなエロ映画よりホラー映画よりこの映画は彼氏と見に行かない方がいいということを。あなたの彼氏がよっぽどリベラルかのんき者でない限りは。彼氏の横で自分の行き方来し方そのバランスを見直してしまって、つながれている手を必要以上に強く握り返して怪しまれる羽目になるから。