ヘイセイラヴァーズ

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流れる季節の真ん中で(宝塚星組『霧深きエルベのほとり』感想)

今週のお題「卒業」

 カイちゃんの舞台降りの、真横の席のチケットが取れたのに、私は行くことができなかった。仕事をどうしても休むことができなかったのだ。だけど私は、もともと自分が一方的に片思いした相手とは、ことごとく縁がない星の元に生まれついている。だからもちろん今回のことだって今更特に気にしてなどいない。

 カイちゃんには、私が宝塚を好きになってからずっとずっと励まされてきた。そう、励まされて助けられてきたのだ。人一倍キザなところにも、普通の彼氏みのあるところにも、もちろん美しいそのビジュアルと中身の優しさのギャップにも、私は惹かれたけれど一番好きなところはそこではない。カイちゃんにはなぜだか不思議なマイペースさがあって、それが私は好きなのだった。周りにすごく気を遣っていて、相手の喜ぶ顔がすごく好きでいながら、なぜだか自分独自のペースがあって、それが私を安心させるのだった。マイペースで頑張ればいいのだと、それでいつかは花開くのだと、教えてもらっているような気がしたから。

 カイちゃんの男役最後の物語である『霧深きエルベのほとり』は切ないエンディングであった。世の中に悲恋の話は数あれど、身分の差が問題になっている恋で「死が二人を分かつ」以外の結末を私は初めて見たような気がする。だけど、誰といることになるのか、どこに流れ着くのか、それがある程度自分には選びようのないことなのかもしれないと思う。私が片思いの相手となかなか縁がないことと同じように。

 だけど私は、マルギットは、それらを死ぬまで忘れることはないだろう。最後に流れ着くことのなかったいくつかの選択肢と、そして、最後に片思いをした相手のことを。

 春が来るね、もうすぐ。終わりと始まりの春が来る。今年卒業する人もこれから卒業する人も、みんなみんな、おめでとう。